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この人のすてきなこと
アルゼンチン『cubreme(クブレメ)』のアレハンドラのニット。
2018年の秋、カルロス・アギーレを訪ねてアルゼンチンへ行ったとき、ブエノスアイレスで一軒のショップと出会いました。名前は『cubreme(クブレメ)』。“Cover me” “包んで”という名前のニットを中心としたショップです。
お店のドアを開けて、たまたまお客さまを送りに出てきたオーナーのアレハンドラと遭遇、ドアの奥をのぞいていたらアレハンドラはにっこりと微笑んでどうぞ中へと手招きしてくれたのです。
シンプルでスタイリッシュ、ひんやりとする石造りの店内、ところが積んである生成色のストールに手を触れた瞬間、柔らかくなめらかな肌触りでふんわりと包まれるような気持ちに。店内には生成りやグレー、ブラウンなどナチュラルな色合いのトップスが並んでいて、どのアイテムも触れると指先からじんわりと心地よくなるのです。
アレハンドラは、慣れない英語で一生懸命ニットの素材について説明をしてくれました。羊のこと、産地のこと、編み方のこと。そしてショップのバックヤードへ案内してくれのですが、そこはアレハンドラの小さな宇宙。壁には大好きな絵や写真が飾られ、棚にはたくさんの試作ニットが並び、ミシンや針や糸やお気に入りのオブジェがびっしりと詰め込まれています。アトリエの空間を見ているだけでここからはきっといいものしか生まれてこないのだろうと感じていたけれど、さらに案内されたのは毛糸のストックヤードを見てそれは確信に変わりました。羊やラマの自然な色の糸。白い羊からは生成りの毛糸、茶色い羊からはブラウンの毛糸、黒と白の羊の毛を合わせて紡ぐとグレーの毛糸。自然の油分を含んだ毛糸はニットになる前からステキな空気を纏っていました。
原毛や毛糸を説明しながらアレハンドラが、わたしたちに伝えたかったことは、『cubreme(クブレメ)』は自然を傷つけずにファッションを楽しむことを信条としていることでした。のちにわたしたちが翻訳を手伝うことになったブランドブックには、いくつかの信条が記されていました。
時代を超えた
クブレメは、シンプルで美しく、持続的なデザインによって、ものづくりをします。わたしたちが扱う素材は、製造過程のすべてにおいて自然を尊重しているものだけです。
気づき
わたしたちのインスピレーションは常に進化していて、人々とその物語や、いくつもの瞬間によって生じるものです。例えば、愛されているものや継承し守るべきものの記憶によって。そして時代を超えたスタイルへの深い感謝によって。 わたしたちの現在のデザインは、人々と自然環境の融合、工芸品と天然資源と地域性への考慮を表現しています。
配慮
わたしたちの仕事は、伝統的な技術の足跡をたどります。熟練した手仕事は、慎重で良心的 なものづくりを可能にします。そして、すべての衣服と小物に独自のスピリットと物語を授けようと考えています。
わたしたちはお気に入りのアイテムを買って日本へと戻りました。そしてそのニットを身につけるたび、いい香りとふんわりとしたやわらかさに包まれていい気持ちになり、アルゼンチンのことを思い出していました。そして、いつか『cubreme(クブレメ)』のニットとアレハンドラの思いを日本に伝えることができたならと小さな夢を見ていました。
そして2021年秋より松江『Daja』で、2022年春には姫路『HUMMOCK Cafe』で『cubreme(クブレメ)』のニットを販売をしていただけることになりました。自然を大切にするアレハンドラのニット、アレハンドラの思いにぜひ触れてみてください。